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天岩戸伝説
なんとか、高天原への地に入ることを許されたスサノヲは、その後、乱暴狼藉の数々の悪事を働いてしまいます。例えば、アマテラスの田んぼの畦(あぜ)や溝(みぞ)を破壊したり、神殿にクソをぶちまけたり、正に好き勝手放題を働くのです。

しかし、それでも、アマテラスは、周囲の苦情をよそに、「これは考えあってのこと」と、弟の愚行を庇い、深く咎めようとはしませんでした。しかし、ある時、スサノヲは、馬の皮を剥ぎ、それを機織り小屋の屋根に穴を開けて、そこめがけて馬を放り投げてしまいました。
すると、これに驚いた機織りの女は、転げ落ちて、尖った器具を陰部に突き刺さして死んでしまうのでした。さすがに今までかばい続けてきたアマテラスも堪忍袋の緒が切れて、天岩屋に身を潜めてしまうのでした。いやはや、アマテラスが岩屋の中に身を潜めてしまうと、高天原も中葦原国ともども世界は瞬く間に漆黒の闇に包まれてしまいました。すると、禍いが世界に蔓延し、困った八百万の神々は一同集まって、『思慮』の神である思金神(オモイカネ)に、どうすればいいのか、相談をするのでした。そして、思金神は次のように様々な儀式を提案をし、その案にそって、アマテラスを外に誘い出すよう命じました。
天安河原宮(あまのやすかわらぐう):宮崎県西臼杵郡高千穂町
天安河原宮は、天岩戸に隠れてしまったアマテラスを外の世界に引きずり出すために、八百万の神々が集まり、相談し合った場所とされています。
(天岩戸作戦の手順)
[1]常世の長鳴鳥(鶏)を集めて鳴かせた。
[2-1]『鍛冶』の神、天津麻羅(アマツマラ)を探し、鋼(はがね)を鋳造させた。
[2-2]その鋼を元に、伊斯許理度売命(イシコリドメ)八咫鏡(やたのかがみ)を作らせた。
[3]玉祖命(タマノオヤ)に命じて、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を作らせた。
[4-1]『祝詞』の神、天児屋命(アメノコヤネ)と『祭祀』の神、布刀玉命(フトダマ)を呼び寄せた。
[4-2]両神に、雄鹿の肩の骨を抜き取り、ははかの木を取って占い(太占:ふとまに)をさせた。
[5-1]賢木(さかき)を根ごと掘り起こし、枝に八尺瓊勾玉と八咫鏡と布帛(ふはく)をかけた。
[5-2]それをフトダマが、御幣(ごへい)として奉げ持った。
[6]アメノコヤネが祝詞を唱え始めた。
[7]「腕力」の神、天手力男神(アメノタヂカラヲ)が、岩戸の脇に隠れて待機した。
[8]『芸能』の女神、天宇受賣命(アメノウズメ)が、胸をさらけ出し、裳の紐を陰部までおし下げて踊った。
[9]八百万の神々が一斉に笑い出した。
立岩神社(たていわじんじゃ):徳島県徳島市多家良町立岩
立岩神社は、近隣にある金山神社の摂社で、天津麻羅(アマツマラ)を祀り、この地で八咫の鏡を製作されたものと推定されています。
こうして、祝宴にも似たどんちゃん騒ぎを繰り広げると、岩戸の中に籠っていたアマテラスは外の騒がしさに、耳を立て、次第に外のことが気になり始めました。そこで、アマテラスは、天岩戸を少し開け、「自分が扉の中に籠っているのに、何故、皆は楽しそうなのか」尋ねます。すると、楽しそうに踊るアメノウズメは、「あなた様より尊い神さまが現れたので、それを祝っているのです」と答えた。そして、アメノコヤネとフトダマは、用意していた八咫鏡を掲げました。

すると、鏡に写った自分をその新たに現れた貴い神だと思い、その姿をもっとよく見ようと、岩戸から身を乗り出しました。すかさず、岩戸の脇に隠れていたアメノタヂカラヲが、アマテラスを外の世界へと引きずり出しました。そして、フトダマが、岩戸の前に進み、注連縄を張り、「もう中には入らないで下さい」と頼みました。

こうして、太陽の神、アマテラスは、無事、外の世界に戻り、世界に再び明かりが訪れたのです。そして、一説には、アマテラスを引きずり出したアメノタヂカラヲは、その後、再び、アマテラスが、岩戸の中にお隠れにならないようにと、その岩戸を蹴り飛ばし、それが、遠く長野県の地にまで飛んで行き、現在の戸隠山になったと伝えられます。そして、アマテラスが天岩戸へお隠れになるきっかけを作った素戔男尊は、髭(ひげ)と手足の爪を剥ぎ取られ、高天原から追放されたのです。

天岩戸神社西本宮(あまのいわとじんじゃ・にしほんぐう)
:宮崎県西臼杵郡高千穂町岩戸1073-1
天岩戸神社東本宮(あまのいわとじんじゃ・ひがしほんぐう)
:宮崎県西臼杵郡高千穂町岩戸1073-1
天岩戸神社は、西本宮と東本宮、から構成されており、元々、ニニギが天岩戸伝承を偲んで、その古跡にアマテラス祀ったことに始まるとしています。この為、当地は、天岩戸伝承の比定地とされています。
戸隠神社(とがくしじんじゃ):長野県長野市戸隠
戸隠神社は、アメノタヂカラヲが、蹴り飛ばした岩戸が、現在地まで飛んで来てこの戸隠山になったという伝承を持つ神社となります。そして、そのご祭神には、アメノタヂカラヲを筆頭に、天岩戸伝承で活躍された神々を中心に祀られています。
玉祖神社(たまのおやじんじゃ):山口県防府市大字大崎1690
玉祖神社は、天岩戸伝承で、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を作ったタマノオヤが最後に亡くなった地と言われています。また、境内で飼育されている黒い鶏、黒柏(くろかしわ)は、この天岩戸伝承で最初に鳴いた鶏の末裔だとしており、天孫降臨と共に来たとされ、佐波(さば=山口県防府市)が原産としています。
日食は不吉の象徴
今でこそ、皆既日食は、一大自然イベントとして人気を博しておりますが、本来、日本では、この日食というものは不吉の象徴でありました。元々、この天岩戸伝承も日食を表したともされ、天子が犯されるという意味を持つ、大変不吉な天変地異として恐れられて来ました。そのため、かつては、日食を浴びることはケガレを意味し、日食が分かると、家の中に籠って日食を浴びるのをとことん嫌ったようです。これは、宮中でも同じく、日食は、天皇自身の不徳が招いたとお考えになり、その時は、宮中行事は行わず、ひたすら、自らの不徳を詫びているそうです。そのため、日本では、天皇陛下自らが日食を浴びるのは絶対に許されないため、今でも天文を司る部署が、宮中にあると聞きます。本来、日本的には、日食はNGなんですね。
神楽の始まり
今回、この天岩戸伝承では様々な神々が登場し、活躍をされます。その中でもとりわけ目立った存在が、天宇受賣命の神懸かり的な踊りで、これをお神楽の原点と見なされております。そして、その子孫たる猿女君(さるめのきみ)と呼ばれる方々が、宮中で鎮魂の儀に携わり、演舞を披露したとされ、アメノウズメは、広義において、芸能の神として、崇敬を集めるようになりました。因に、この「神楽」という言葉の語源も、「神座(かみくら)」から来ているとされています。
祭祀の原点
このアマテラス救出作戦は、いわゆる祭祀行為の原点ともいうべき構成を採っています。榊に布帛を飾って捧げるというのもそう、祝詞を奏上し、神楽を奉納するという一連の動きは、まさに正式参拝をされる時に見られる手順とも言えます。中でも、最後にフトダマがこしらえた注連縄は、まさに注連縄、注連飾りの原点とも言われます。この他、最初に鳴き出す常世の長鳴鳥は、その木にとまる姿から「鳥居」に転じたという説さえあります。そういう意味では、この天岩戸伝承は、現在の神道を伝える上で、非常に重要な意味を放っていると言えます。
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