実はこの狛犬の形状は多岐にわたり、近世から現代にかけて、各地の寺社に膨大な数が造られています。しかも、犬型のもののみならず、キツネ・イノシシ・オオカミなどといった他の動物が引用される場合もあります。これらの動物は一般的に「神使(しんし)=神の使い」とも呼び、神社(祀られる神)によっては特定の動物が採用されていることもあります。例えば、稲荷神社の狐、春日神社の鹿などの組み合わせはその代表的なものと言えます。また、カッパ伝説のように、その土地の伝承などに由来する場合もあり、そんなレアな神使像を探すのも楽しみの一つかもしれません。
伊勢神宮に参拝してみると、境内の参道沿いに狛犬像を見ることはありません。その確かな理由は定かではありませんが、実は、境内の参道に狛犬像が置かれるようになったのは、江戸時代に入ってからと言われております。狛犬像が伝来した当初は、宮中の清涼殿(せいりょうでん)の中に、鎮子(ちんす)と呼ばれる重しの代わりや魔除けの意味に置かれたと言い、それが、平安時代から鎌倉時代にかけて寺社の建物の中にも置かれるようになったそうです。つまり、屋内に鎮座していたのが最初の姿となるのです。